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● 歯型可撤式模型製作法における作業工程
〜Smart-Pin「Renfert社」を使用した場合〜


 

 A.1.マスター模型は歯科技工を行なう上で最も重要である! といっても過言では無いでしょう。

 

 我々は様々な歯科医師の先生方から患者情報を受け取り、患者様の顔貌や口腔内の状況を踏まえながら

 作業を進めるものの、実際のミクロにまで至る情報は「作業用模型」からしか入手できない。

 突き詰めれば、補綴装置は模型以上のものはできないが、「最も大切に扱うもの」として認識している必要

 があります。

 

  2.そこで言うまでも無く、術者は「指示書」を熟読し、理解しなければならないし、曖昧な事項について

   は必ず担当の歯科医師の先生とコミュニケーションを図るべきである。

 

  3.添付物のチェック: 指示書(特別指示内容、金属名、補綴装置名などの有無の確認)、印象物、または

   各種模型、バイト、対合歯列模型、色調分析用媒介(メディアカード、メール等)、フェイスボウや

   ラインファインダーetc.の有無を必ず把握し、確認しよう(表01)。

 


指示書サンプル2 

              表01:指示書の例                      

 

 B. 印象のチェック; 印象の正確性(不鮮明性の確認)、唾液、血液の有無をチェックする。


    注意:該当する作業工程チェックリストを配布する必要がある。

 


 C. 印象到着時には、迅速にマスター模型用に石膏注入を行う

   (マスター模型;80gの超硬石膏「ModerockU 松風」注入後、最低5時間/保留、硬化時膨張;0.1%)。


  →これは表面性状の適確性と後の作業工程時における模型強度の確保に繋がります。

 

 D. 石膏注入時の欠陥(気泡混入等)を防ぐためには、バイブレータや細筆、極細インスツルメントおよび

   エアーなどを適宜に使用しよう。

 

 E 模型の撤去(デザインナイフ、石膏ナイフ、模型撤去用鉗子およびエアー等の使用)。


   注意:デザインナイフ等の使用時における把持方法、切除角度、シャープさが与える全体的な印象等に

       留意するとともに、良好な模型では天然歯列の状態、歯牙の形態および表面性状などを深く把握する

       ことが最重要事項となる。

 

00a-模型

図01:超硬石膏模型(片顎;80g)

模型提供;(有)デンタルクリエーションアート「西村好美」氏



 F. マスター模型のチェック;プレパレーション形態、マージン部の正確性や明確性を確認し、模型には極力、

   触れないように留意することが非常に重要である(図01)。

  
  *問題を有する場合→ 指導や責任」者への報告を行なう。

 

    02-Margidur02 図02

 G. 支台歯、隣接歯および対合歯へのマージダー

  (石膏硬化材;一度目の塗布では被膜が無く、

   2回目に7μm、3回目で14μmの被膜を

   形成する。)の使用。 (図02

  

 

H. トリーマー、ピンデックス、

  サンド(水)ペーパーまたは

  部位に応じては、切削バー類

  による模型トリミングと研磨

  を行なう(図03a&b)。

02z-モデルトリマー 04c-基底面_耐水ペーパーによる研磨

図03a:トリーマー       図03b:サンドペーパーによる研磨後

 

 

05-均し 05-マーキング 05-圧痕

 図04a〜c

 I.1.ピンデックスによる穴開け;模型の角にアンダーカットが生じないことを必ず確認し、ピンデックス

    ドリルの位置、長径等を今一度、チェックした後、ピンデックスによる穴開けを行なう。

    後の瞬間接着剤湧出防止溝を太いバーでやや浅く付与して置く(図04a〜f)

 

        06a-ドリリング後06c-コーヌスピン挿入前_穴拡大

        図04d〜f

 

  *注意:マイスター模型基底面の外側面に移行するエッジは、ペーパーコーンまたは耐水ペーパーで

   やや丸く仕上げることが重要である(… でなければ、模型ごと破壊することに繋がる)。

 

  2.正確なピンの位置を担保する目的で、穴開けしたいピンの位置をシャープペンシルにて印記した後、

    ピンデックスドリルと同じ直径のバーで極浅く圧痕を付与すると良い。

 

    ピンデックス上で、その圧痕に回転していないピンデックスドリルを適合させた後、回転させ穴開けを

    行なうことによって、正確な穴開けによるピンの位置が容易に確保できる。

 

07-pin   07a-ダイヤボンド_瞬間接着剤

図05a&b

 J. 瞬間接着剤「ダイヤボンド」によるスマート(ダウエル)ピンの稙立およびメタルスリーブ挿入。

    *注意:スマート(ダウエル)ピンは支台歯よ残存歯に必ず最低2本植立する必要があり、Bi-Pin等の

      ように2本に枝分かれしているピンは元々1本であり、頬舌的動揺を避けることは不可能である。

      それは森の1本の木が枝分かれしているだけで、2本の木には決して敵わないことに他ならない。

 

08a-ピン植立 09b-鞘 10a-Supersep

図05c〜e

   *注意:瞬間接着剤湧出防止溝が付与されているものの、瞬間接着剤を適量に定義できること

        が重要である。

     また、メタルスリーブの挿入時の圧力はコーヌスクローネの接着性適合が発揮する程度で、

     あまり強すぎる必要はない。

 

 K. 石膏分離材の塗布:スーパーセップ(KaVo Kerr社)。


   *注意:スーパーセップによる厚過ぎる塗布は必要無いが、マスター模型における歯列外側の

        2次石膏に埋まる部分には分離効果を持たせる。 

 

 L. 二次石膏110gの注入;マスター模型基底面への超硬石膏の築盛 → 気泡混入の回避 (図06) 

 

  11b-2次石膏注入前準備   13b-2次石膏被覆_模型上

  図06a&b:超硬石膏模型(片顎;80g)

12a-2次石膏注入 14a-2次石膏埋入 15a-2次石膏硬化

図06c〜e

 

 M. 二次石膏台からのマスター模型脱着と二次石膏台のトリミングおよび研磨仕上げ(図07)。

 

15d-2次石膏硬化_撤去 16b-2次石膏硬化後_トリマー  

図07a&b

 

 N. 印象内面から生じた気泡の完全なる除去および基底部に境界線が存在するものの、下図のように

   マスター模型と二次石膏台間には一切の間隙も観察できない良好な適合性が視認できる(図08a〜c)。

    → 完成

 

19a-1次2次石膏の境界線 18c-完成 20d-1次2次石膏の境界線

図08a〜c

  O. 咬合面上の気泡除去(対合歯が補綴装置作製に関わる場合

     → 指導者への報告

 

       20a-1次2次石膏の境界線

    20c-1次2次石膏の境界線

図09a&b

 

 P. 支台歯の適合精度のチェック;


   上述した模型製作により非常に正確な作業用模型ができるが、支台歯の適合精度を確認する場合には

   マスター支台歯と二次石膏台間に一切の間隙も生じてはならない。


   支台歯の唇舌的または頬舌的動揺はピンを必ず2本以上植立することで回避できるものの、

   近遠心的揺れに対してはマスター支台歯が二次石膏台によって把持する効果に依拠している。

 

 *ドイツのJan Langner氏の場合、「Jet-Pin」システムによるマスター模型は支台歯の近遠心的動揺

  に対して、隣接部に「Block-Pin」を挿入することによって回避している。

 

 Q. 気泡除去時のエバンスやデザインナイフ等による切除角度の理解


            → 歯牙形態を考慮した歯型彫刻の重要性へと繋がる。

                            ↓

 ・天然歯形態、機能面の咬合基準面の観察とその臨床への応用を目的とする。

 ・コンビネーションデンチャー等のオーバーインプレッション(レジン支台)および

  インプラント用モデル等は適時、指導説明を受けましょう。

 

 





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