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●天然歯の色調理論 04


 

地球.jpg



 

 

9.色調:明度・色相・彩度って何だろう?

NCC(Natural color concept)システムとは?

 

天然歯の色調は明度、色相と彩度が3次元的に構築されていることを先ず知って頂きたい。

 

我々が応用している「NCCシステム」は、天然歯の色調を「マンセルの色球=L*a*b*色空間」で表し、

色調自体を濃い、薄いで言い表すことにしました(山本眞先生により提唱された)。

 

図01にその「マンセルの色球」を示しますが、RGB(赤、緑、青)やCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、

ブラック)の色空間とは異なり、Lab色空間はヒトの視覚に近似するよう設計されているのです。

 

「L」成分値はヒトの「明度」知覚に極めて酷似します。

 

したがって、カラーバランス調整を正確に行うために出力曲線を a および b 成分で表現したり、

コントラストの調整のためにL成分を使ったり、、、といった利用が可能です。

 

Lab色空間はコンピュータディスプレイ、プリンタや人間の知覚よりも色域が広く、Lab色空間で表現した

ビットマップ画像は同等精度のRGBやCMYKのビットマップ画像よりもピクセル当たりのデータ量が多く

なります。

 

そして、マンセルの色球は元来、楕円形なのです(図02)。

          

15a-マンセルの色球 15b-楕円形

図01 マンセルの色球        図02 本来のマンセルの色球(楕円形)

 

下図03左は「マンセルの色相環」を示しますが、これらの色相が最も彩度の強い、言い換えれば、

一番鮮やかな色相です。


もし、マンセルの色球を地球儀に例えるなら、北極点は最も明るい白い明度の10と示し、南極点を

最も暗い黒で明度0とし、赤道が最も鮮やかな(彩度)色相を表わすのです。


したがって、その赤道から内側に進むにしたがって、次第に彩度が低くなり、やがて北極点と南極点

を結ぶ線(L*)に到達することによって、無彩色となるわけです(図03右)。

 

図41 マンセルの色相環と色の3属性(明度、色相、彩度)

図03 マンセルの色相環と色の3属性(明度、色相、彩度)

 

そこで、日本人の天然歯の色調分布をこのマンセルの色球内にあてはめてみよう。

マンセルの色球を地球儀と想定すると、天然歯の色調分布は丁度、インド洋から見た日本列島

程に位置しています。

 

またその結果は、A系統のシェードが最も多く観察されるのです。

 

マンセルの色球内におけるヒトの歯の色調分布 図4の拡大図

図04 マンセルの色球内におけるヒトの歯の色調分布      図05 図04の拡大図

図44 ヒトの歯の色調における「色の濃い、または薄い」という表現      楕円の真ん中はAシェード

図06 ヒトの歯牙色調における「色の濃いまたは薄い」という表現定義

図07 楕円形の中心部はA系統のシェードであり、日本人に最も多い。

最も薄いAシェードはA1であり、A2→A3→A3.5→A4→Arootと色が濃くなって行く。また、より明るい色を「バリュープラスA」と呼び、VPAで表す。      図46 ただし、通常の色より暗い色はVita ClassicのC、Dで表していたが、C,Dはこのシステムに調和していないことが見てとれよう。これを「バリューマイナス」と呼ぶ。

図08 最も薄いAシェードはA1であり、A2→A3→A3.5→A4→Arootと色が濃くなって行きます。
また、より明るい色を「バリュープラスA」と呼び、これをVpAなどと呼びます。

図09 通常の色より暗い色はVita ClassicのC、Dで表していたが、C,Dはこのシステムに調和して
いないことが見てとれよう。これを「バリューマイナス」と言い、VmAなどと表わします。

図47 上述の色調分布をプロット図で表した。もはや確実にC,Dの色が他の明度に調和していないことが見てとれる。   

図10 上述の色調分布をプロット図で表してみたものの、、、
もはや確実にC,Dの色が他の明度分布に調和していないことが見てとれます。

図11 これらを修正した陶材を「バリューマイナスAおよびR」と呼び、「VmA,VmR」と表わしています。

 

それでは、「色相」とはどうなのであろう。

色相は、マンセルの色球における上(地球儀の北極点)から観察することによって明確になる。

 

図49&50 色相上の中心部をAシェードとすれば、より黄色を帯びた領域をBシェード、また、赤みがより強い場合はRシェードとなる。      

図12&13 色相上の中心部をAシェードとすれば、より黄色を帯びた領域を
「Bシェード」また、赤みがより強い場合は「Rシェード」と呼称します。

図51 プロット図上でVita ClassicのC,Dシェードが如何に他の色相と調和していないかが見てとれる。   図52 Vita ClassicのC,Dシェードを「VmA,VmR」に変更した明度と同様にプロット図上で観察した。

図14 プロット図上でVita ClassicのC,Dシェードが如何に他の色相と調和していないかが見てとれよう。

図15 Vita ClassicのC,Dシェードを「VmA,VmR」に変換した明度と同様にプロット図上で観察しました。


*「バリューマイナスAおよびR/VmA,VmR」は色調上、非常に調和しています。

 

このように天然歯の色調は明度、色相と彩度を3次元的に表現し、日常の臨床に活かす必要があるのです。

 

 

10.色調分析に必要とされる「2度視野」とは?

 

水平直視   垂直直視

図16 水平直視=X                    図17 垂直直視=◎ 

 

図16と17では、それぞれ水平比色および垂直比色を行ないました。

では、どちらが正しいシェードテイキング法に適っているのでしょう?


答えの解説については、図18を参照していただきたい。

「色覚」を司るヒトの眼の視細胞、「錐状体」は中心窩中央部直径2mm範囲のみに集中しています。

 

その集中角度は2度であり、よってこれを2度視野と呼んでいます。

 


シェードテイキングの平均的理想距離である30cmからこれを換算すると、2度視野では幅径約1cm以内

が最も色覚が高められる視覚領域ですが……

 

それは中切歯1歯分の幅径が約1cmであり、シェードガイドを歯面下にきっかり平行に位置付ける

ことによって、わりあい正確な測色が可能となるわけです。

 

したがって、「垂直比色」が正解なのです。

 


これに対して桿状体は「光覚」が発達しており、10度視野に最も多く分布することから(図18)、

シェードテイキングの平均的測色距離では、5cmの範囲で明暗(明度)を最も理想的に判断できます。

 

これは大概的に歯牙3〜3部に相当します。

 

また、これらに桿状体と錐状体の細胞絶対数(桿状体:1億3千万個、錐状体:7百万個)の差を

加味すれば、同一測色条件時の理想的測色範囲は、色覚より約5倍も広い「光覚」に有利となります。

 

すなわち、これは補綴装置の「明度」が色相、彩度よりも優先されることに他ならないわけです。

 

09a-中心窩部の視細胞の分布

図18 桿状体と錐状体の中心窩からの隔たりによる細胞絶対数
坂 清子著:Q&A セラモメタル・サイエンス より

 

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