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●腐った食材で美味しい料理は作れない話


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『腐った食材で美味しい料理は作れない話』

 

皆様は「うまい技工士」と聞いて、どんな人を想像されますでしょうか。

 

例えば印象が変形していたり、バイトが正確にとれていなかったにも関わらず、

無調整のクラウンを製作できる人のことなんでしょうか。

 

ともすれば、達人級の技工士ならきっと……

どんな条件下でも素晴らしい技工物を製作できるに違いありません!

 

すごいッス!


一瞬、あこがれてしまいます……

 

 

 


……でも果たして、


本当にそうなのでしょうか?

 

 

少し考えてみてください。

 

 

確かに昔の人は「弘法筆を選ばず」と言いました。

 

しかし

これはあくまで「達人は道具を選ばなくてもそこそこの作品ができる」

といった意味であり、

 

「最高の作品を仕上げるために道具は無関係!」

などといった意味では決してないはずです。

 

いくら弘法大師でも竹箒を使って書道を嗜むことは出来ないでしょうし。 。


材料や道具の良し悪しが、結果に直結することは明白です。

 

 

 

またどれだけ腕利きのシェフが居たとしても、

食材が腐っていては美味しい料理を作れるはずもありません。

 

 

これは歯科補綴においても同様です。

 

 

例えば、


印象をそれなりに正確な寸法精度で採得することは昨今の印象材を用いれば、


甚だしく困難な手技ではないですし、本来、そうあるべきでしょう。


印象から石膏模型を正確な寸法精度で起こし、

精密に模型や補綴装置を製作することも比較的に容易です。

 

 

ただ、「技術的に簡単なこと」と「労力的に簡単なこと」は全く違います。

 

 

実際には、


「印象をそれなりに正確な寸法精度で採得する」ことはとても大切なことであり、

それを欲するとしても、そう簡単には行かないまでも全く不可能ではないはずです。

 


しかしながら……


その口腔内を寸分も狂わずに再現するためには、

適切な材料、道具やその取り扱いに対する知識、

手間が掛かる前準備や正しい確認作業が必要不可欠なのでしょう。

 

 

つまり、

技術的には不可能では無い感じたとしても、ひたすら手間のかかる作業工程

とその深い知見等の連続

になってしまいます。

 

そしてこうした「簡単だけれど面倒な作業」は、

食材の管理や下ごしらえなどを介して、とりわけ確実な作業へと通じて行きます。

 

これらを怠れば美味しい料理は作れませんし、

どこかで妥協をすれば、その分だけ料理の質は落ちていきます。

 

 

つまるところ、

「インレーだし片顎印象でいいや」

「対合歯だから普通石膏でいいだろう」

「マージンはこの辺りでしょう」

「少しの模型支台歯のアンダーカットや気泡などは後で埋めよう!」などなど……

 

 これは確実性を欠いた単なる「勘」でしょう。

 

こうした譲歩や不確実性は、

少なからず完成した技工装置に明確な悪影響を与えてしまいます。

 

我々は生身の人間を相手にしています…

絶対に失敗は許されない気持ちで日々の臨床に臨んでいます!

 

 

 

うまい料理は、優れた食材や調理器具から生み出されます。

 

 

 

うまい技工装置も、

きっと正確な印象やバイトによってのみ生み出されるのでしょう!

 

 

 

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            ライター 瀬 直

 

 


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