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「ゼロから始めるステイン講座」

〜気になるステインの選び方〜

 

 

「e.maxうまくいかないんだけど。いつもどんなステイン使ってんの?」

 

先日、友人からLINEでこんな質問を受けました。

 

 

確かに気になりますよね。

 


e.maxやジルコニアのステイン法というものは塗り方も大切ですが、何よりステイン選び

が文字通り明暗を分けます。

 

 

どういった部位にどんなステインを塗れば良いのか…

…ざっくりしとしたメーカーのパンフレットはあっても、実際に

臨床レベルで踏み込んだマニュアルは存在していないのが現状です。

 

 

ちなみに、私は主に松風社のVintage Art(以下本家)およびVintage Art LF(以下LF版)

を使用しています。

 

折々他社製品も使用するものの、、、

 

発色や使い勝手からなんだかんだコレで落ち着いてしまうんですよね。


(別の機会でメーカー別ステインの特徴なんかも題材にできたらいいのですが、、、)

 

 

 

そこで今回はVintage Artシリーズの中でもとりわけ使用頻度が高く、汎用性に優れたもの

を何点かピックアップしてみました。

 

ぶっちゃけ、これだけ揃えとけば最低限ステインワークで困ることはないよ!

といったくらいのラインナップだと思っています。


(もちろん、よりリアリティを出したい場合は豊富な種類のステインが必要です。)

 

 

特徴や使用感を体感レベルで雑記しましたので、何かの参考になれば幸いです。

尚、ステインの塗り方や色調理論については下記を参照下さい。


> 天然歯の色調理論 04:色調分析に必須とされる明度、色相、彩度とは?


> 老年代前歯オールセラミックスクラウンの築盛法とステイン法の比較

 

 

Aシェード(LF Aシェード)

A系統の色のステイン。各メーカーから同名のステインが多数リリースされている。

Aシェードとはいうものの、単純にこれを塗るだけでA系統になる場合は少ない。

全体的に緑がかっているe.max LT系統などはその傾向が顕著。


彩度の補強目的に使う場合は明度を大きく落としやすいのでオレンジとの使い分けが求められる。

LF版は本家と比べて色調差が大きく、発色が弱い代わりに全体的にふんわりと色付けをする

のに向いている。

 

 

●オレンジ(LF オレンジ)

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象牙質のもつ暖色を再現しやすい。

汎用性が高く、ローズピンクやワインレッドと混ぜてA系統の彩度強化に用いる他、

ブルーグレーと混ぜればAシェードの様な使い方が出来る。


彩度強化目的としては比較的明度を落とし難く、使用頻度は高い。

LF版は本家と比べて色調差が大きく、発色が弱い代わりに全体的にふんわりと色付けをする

のに向いている。

 

 

●ブルーグレー(LF ブルーグレー)

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文字通りブルーとグレーの混合タイプ。

欧州では「鳩色」と称されることも。

下地のオレンジ・イエローを吸収し、透明感を表現するのに重用する。

グレーと異なり補色作用が働くため、視覚的に大きく透明感を得られる。

ただし、下地にオレンジ・イエロー要素のない真っ白なジルコニアに塗布しても単に青くなるだけ

で透明感を得られないので要注意。

 

目安として、塗ってみて「青いな」と思えたら、下地のオレンジ・イエローが足りないと判断して良い。


LF版は本家と色調差が小さく、発色がやや弱い代わりにムラになり難い特性をもつ。


本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、使い勝手が向上する。

 

 

●ダークレッドブラウン(LF ダークレッドブラウン)

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強力な彩度を発揮する赤茶色のステイン。


ヘアラインや臼歯の裂溝等、ピンポイントながら使用頻度は高い。


赤みが強く、意外に汚らしくならないのがメリット。

 

またワインレッド、ローズピンクに少量混ぜることで強い赤みのサービカル色を表現できる。

LF版はピンポイント使用には向かない為、本家と混ぜて使うと良い。

 

 

LF バニラ

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ホワイト系のステイン。


ややクリーム色に近い色調で、A系統の色を僅かながら有している。

 

ホワイト系ながら極端に彩度を落とさない為、白帯や脱灰部の表現に重用する。


他のステインと異なり、本家よりもLF版の使用頻度が高い。

 

注意点として、焼成後6割程度に発色が低減する為、やや強調して塗布する必要がある。


発色を強化したい場合は本家ホワイト+LFオレンジ(極少量)を混ぜ込むと良い。

 

 

●オレンジブラウン

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オレンジの彩度強化版。


咬合面の深みの強調や隣接部、前歯切端部の着色域に使用する。

 

A系統から絶妙に外れることの多い、強い彩度の老年代歯牙に対しても有用。

LF版は本家と色調差が小さく、発色がやや弱い代わりにムラになり難い特性をもつ。


本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、使い勝手が向上する。

 

特に臼歯咬合面のインターナルステインとして使用する場合は、LF版あるいは

上記の本家&LF混合を使用すると良い。

 

 

マメロンアイボリー

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主にインターナルステインに用いる。


マメロン部の強調といった他、クラックラインの表現としても有用。

 

インサイザルヘイローの表現として使えなくもないが、不透明すぎる上にムラになり易いため、

LFバニラ+LFオレンジ(少量)と混ぜると使い勝手が向上する。

 

 

●ローズピンク

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主にサービカル付近、歯肉色を反映したピンク色の表現に用いる。


特に形成ラインが浅い場合、マージン付近に塗布するか否かで大きく差が生まれる。

 

オレンジやAシェードと混合することでレッドシフトシェードが再現できる。


またe.maxインゴットが初期から有する青緑系統を、補色で打ち消す一役をも担う。

LF版は本家と色調差が小さく、発色がやや弱い代わりにムラになり難い特性をもつ。


本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、使い勝手が向上する。

 

 

                      door-3264790_1920.jpg

                      ライター 瀬 直

 


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